梨づくり一年間の流れ
「梨農家は収穫期以外は何してるの?」と尋ねられますが、じつは一年中仕事があります。
私たち梨生産者は夏に良質な梨を収穫するため、梨の木と周年向い合い様々な作業をしています。
※梨の生育は気候によって変化し、表より10日程度前後する場合があります
4月上旬~中旬 交配(授粉)
梨の花(雌しべ)に花粉をつける作業です。
梨は同じ品種同士の花粉では受精・結実しない性質をもっているため、他品種の花粉をつけてやる必要があります。
5本ある雌しべの先端(柱頭)に全部に花粉をつけることで、種がまんべんなくできて、かたちのきれいな果実になります。
ミツバチや風も花粉を運んでくれますが、自然任せだと成りにムラが出たり、変形果が増えたりして、ばらつきの出てしまうのが否めません。
雌しべの柱頭に人の手で丁寧に花粉をつければ、より確実に、かたちがきれいな果実を成らせることができます。
4月下旬 ネット張り
花が咲き終わり交配が一段落すると園全体を覆うネットを展開します。
正式名称を「多目的防災網」といって、読んで字のごとく多くの災害から梨の実を守るネットです。
細かい網目のため、強風を軽減し、降雹を防ぎ、園内への害鳥・害虫・害獣の侵入を遮ります。
ネットは梨の収穫後(10月中下旬)に収納します。
5月上旬~6月上旬 摘果
交配で結実した果実を適切な数に減らす作業です。
かたちが良く大きいもの、軸が長くしっかりしたものを残し、変形した果実や虫害のあるものはハサミで落とします。
梨は葉っぱ約30枚で1個の果実を養うことができます。なので数が成っていればよいというものではありません。
摘果をすれば養分の分散がおこらず、残された果実により多く集まるため、甘くて大きな梨の実ができあがります。
園全体を周っておこない、一周目に大まかにおこなう摘果を「予備摘果」、二周目に精度を高めておこなう摘果を「本摘果」といいます。
6月中旬~下旬 袋掛け
果皮が傷つきやすかったり、シミができやすい品種には、専用の袋を掛けて表面を保護します。
当園では”かおり”と”新高”の袋掛けをします。
7月上旬~中旬 玉決め
最終的に残す果実を決める仕上げ作業です。
もう一度園内をチェックし、摘果忘れを確認しながら、病気に感染したものや虫の被害を受けたものなどを間引いて、残す果実を選抜します。
8月上旬~10月上旬 収穫・販売
いよいよ手塩にかけてきた果実の収穫です。
家族とスタッフが一丸となって日の出から収穫し、開店前から選果、午後には箱詰めし、夜までに出荷を終えます。
当園では主に、”幸水”、”豊水”、”かおり”、”あきづき”、”新高”、”新興”の順番で採り、直売店で販売しています。どの梨にもそれぞれの個性がありファンがいます。
店頭ではリーズナブルな袋売りがありますので、ぜひ食べ比べしてみてください。
また店頭では上記以外の珍しい品種も少しですが取り揃えています。
11月下旬~12月上旬 土づくり・施肥
収穫が終わっても梨の作業は続きます。
先ず4月に展開したネットを収納し、古い木の抜根、梨園周りの草や生け垣刈りなどをおこないます。
それら細々した仕事が一段落したところで堆肥や肥料を園に施します。
当園では自家製の馬糞堆肥と有機質肥料を中心にあたえており、これらは土で数ヶ月かけてゆっくりと分解されます。
そのため土壌改良効果や肥料成分を翌春効かせるためには、前年のうちに施肥しなければなりません。
昔は人力で堆肥や肥料を撒いていましたが、今はマニアスプレッダーやブロードキャスターといった機械を使って効率的に散布します。
11月下旬~3月下旬 剪定・誘引
春~夏に伸びた枝をハサミやノコギリなどで切り、適正な量と長さに調整する作業が剪定です。
剪定で切った枝を紐で縛り梨棚に固定する作業が誘引です。
全ての木の剪定・誘引をおこなう約4ヶ月の長丁場になります。
肩や腕に負担のかかる仕事なので、お彼岸をゴールに設定し、上手に休みを取りながら計画的に作業を進めていきます。
3月末には蕾が膨らみ、4月からはまた交配作業です。